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2025.05.02

ホテルで人材不足が続いている理由と人材不足を解消する7つの対策

ホテル業界は、成長産業のひとつです。 一方で、人材不足が慢性化している業界でもあります。 十分なスタッフを確保できず、困っている事業者様は多いでしょう。 主な要因は、労働環境の厳しさや採用競争の激化です。 現状を正しく認識して、適切な対策を講じることが重要です。 ここでは、ホテル業界で人材不足が続いている理由と人材不足がホテルに与える影響、人材不足を解消するため取り組みたい対策などを解説しています。 お困りの方は参考にしてください。

ホテル業界で人材不足が深刻化するのはなぜ?

厚生労働省が発表している資料によると、令和6年上半期における「宿泊業、飲食サービス業」の離職率は10.9%です。 9.9%の「サービス業(他に分類されないもの)」を上回り、全産業で最も高い割合となっています。 ホテル業界で人材不足が続いているおもな原因は次のとおりです。 出典:(PDF)厚生労働省「― 令和6年上半期雇用動向調査結果の概況 ―」

長時間労働が求められるから

人材不足が続いている原因のひとつとして長時間労働があげられます。 一般労働者における「宿泊業、飲食サービス業」の月間実労働時間は次のとおりです。
産業  総実労働時間  所定内労働時間  所定外労働時間 
調査産業計  162.2時間  148.7時間  13.5時間 
宿泊業、飲食サービス業  173.6時間  158.1時間  15.5時間 
総実労働時間、所定内労働時間、所定外労働時間とも、調査産業計より長いといえます。 総実労働時間は「運輸業、郵便業」の177.8時間に次いで全産業で2番目の長さです。 長時間労働のイメージが定着していることも人材不足に影響を与えているでしょう。 出典:(PDF)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」

賃金が低いから

賃金が低いことも、人材不足が続いている原因と考えられます。 令和6年6月分における「宿泊業、飲食サービス業」の賃金は269,500円です。 この金額は、全産業で最も低いといえます。 ちなみに、賃金が最も高い産業は、437,500円の「電気・ガス・熱供給・水道事業」です。 採用活動の競争相手は、同業他社だけではありません。 ホテル業界は、賃金を重視する労働者から敬遠されやすいといえるでしょう。 出典:(PDF)厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

休みがとりにくいから

希望した日に休みをとりにくいことも、人材不足に影響を与えている可能性があります。 ホテル業界の繁忙期は、原則として他業界が休んでいる時期です。 したがって、ゴールデンウィークや年末年始などに、休みをとれないことが少なくありません。 また、他業界に比べて、有給休暇も取得しにくい傾向があります。 令和5年における「労働者1人平均年次有給休暇の取得状況」は以下のとおりです。
産業  労働者1人平均付与日数  労働者1人平均取得日数  労働者1人平均取得率 
調査計  16.9日  11.0日  65.3% 
宿泊業、飲食サービス業  11.6日  5.9日  51.0% 
「宿泊業、飲食サービス業」の労働者1人平均取得率は全産業で最も低い値です。 出典:(PDF)厚生労働省「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」

ホテルの数が増えているから

ホテル数の増加も、人材不足に拍車をかけていると考えられています。 限られた人材を、業界内で奪い合わなければならないためです。 参考に、令和元年度から令和5年度における施設数の推移を紹介します。
施設  令和元年  令和2年  令和3年  令和4年  令和5年 
旅館業  88,983  89,159  89,715  90,705  93,475 
旅館・ホテル  51,004  50,703  50,523  50,321  51,038 
簡易宿所  37,308  37,847  38,593  39,811  41,909 
下宿  671  609  599  573  528 
令和4年度から令和5年度にかけての増加数が顕著です。 労働力人口が減少するなかで、ホテル数が増加すれば、採用活動は難しくなるでしょう。 出典:(PDF)厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」

人材獲得の競争が激化しているから

獲得競争の激化も、人材不足に影響を与えています。 円安が進む現在においては、訪日外国人に対応できる人材(=インバウンド人材)の獲得競争が特に激しくなっています。 長時間労働、低賃金など、労働条件が厳しいと、簡単には獲得できないケースが多いでしょう。 他業界で、インバウンド人材の需要が高まっている点もポイントです。

ホテル業界における人材不足の現状

厚生労働省が発表している資料によると、令和6年6月末時点における「宿泊業、飲食サービス業」の未充足求人数は190,900人です。 未充足求人は「仕事があるにもかかわらず従事者がいない状態を補充するために行っている求人」を指します。 「宿泊業、飲食サービス業」の未充足求人数は、270,600人の「卸売業、小売業」、269,500人の「医療、福祉」に次いで上から3番目です。 人材をうまく確保できていないことがうかがえます。 帝国データバンクが行った調査でも、同様の傾向が示されています。 同調査によると、令和7年1月時点で正社員が不足と感じている旅館、ホテルの割合は60.2%、非正社員が不足と感じている旅館、ホテルの割合は50.0%です。 令和6年1月時点に比べると、不足感は和らいでいるものの、依然として厳しい状態が続いています。 出典:(PDF)厚生労働省「令和6年上半期雇用動向調査結果の概要」 出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」

ホテルの人材不足がもたらす影響

人材不足を解消できないと、ホテルの運営にさまざまな影響が現れます。 想定されるおもな影響は次のとおりです。

事業の継続が難しくなる

人材不足の影響で、事業の継続が難しくなる恐れがあります。 十分なスタッフを確保できないと、客室稼働率などに制限をかけなければならないためです。 サービス・ツーリズム産業労働組合連合会が実施した調査で、同組合に加盟する旅行、宿泊関連事業者のうち8割以上の事業者が、人材不足で営業日縮小など対応を強いられていることが示されています。 事業の継続に関わるため、積極的に解決したい課題といえます。 参照元:サービス・ツーリズム産業労働組合連合会

従業員の負担が増える

欠員がでたままホテルの営業を続けると、スタッフ1人あたりの仕事量は原則として増加します。 「仕事量と賃金が見合わない」「ワークライフバランスを保てない」などの理由で、離職につながる恐れがあるため注意が必要です。 離職者が発生すると、スタッフ1人あたりの仕事量はさらに増加します。 状況によっては、営業制限を検討しなければならないこともあるでしょう。

サービスの質が下がる

人材不足は、サービスの質を引き下げます。 スタッフ1人あたりの仕事量が増加して、1つの仕事、1人のお客様に、これまでどおりの労力をかけられなくなるためです。 サービスの質は、ホテルの評判に影響を与えます。 評判が悪くなると、お客様から選ばれにくくなることも考えられるでしょう。 ちなみに、トリップアドバイザーが実施した調査で、82%のユーザーが予約する施設を探すときに口コミを重視する(きわめて重要またはとても重要)と回答しています。 出典:(PDF)トリップアドバイザー「口コミの影響」

ホテル業界の人材不足を改善する方法は?

ホテルは、人材不足をどのように解消すればよいのでしょうか。 検討したい対策を紹介します。

労働環境を改善する

人材不足を解消するため、まずは労働環境を見直すことが大切です。 労働環境が劣悪だと、採用活動を積極的に展開しても、人材を効率よく確保できません。 求職者が希望している条件にマッチしないと、応募の選択肢としてすら検討されない場合があります。 優先的に見直したいポイントとして、賃金と労働時間があげられます。 これらは、採用活動におけるホテル業界のウィークポイントです。 採用活動の競争相手は、同業他社だけに限られません。 労働条件を他業界並みに引き上げないと、希望する人材を確保できない恐れがあります。

福利厚生を充実させる

福利厚生は、法律で定められた法定福利厚生と法律で定められていない法定外福利厚生にわかれます。 法定外福利厚生を充実させると、競合他社と差別化を図れる可能性があります。 法定外福利厚生の例は次のとおりです。 【法定外福利厚生の例】
  • 休暇(冬期休暇、夏季休暇、記念日休暇など)
  • 慶弔、見舞い(弔慰金、結婚祝いなど)
  • 住宅、通勤(住宅手当、社員寮、通勤手当など)
  • 健康管理(フィットネスジムの利用、人間ドック費用の補助など)
  • 育児、介護(独自の育児休暇、介護休暇など)
ニーズを踏まえて法定外福利厚生を充実させると、求職者から選ばれやすくなるはずです。

ITシステムを導入する

ITシステムの導入も、人材不足の解消に有効です。 業務の効率化、省力化、省人化を図れます。 一例として、セルフチェックインシステムの導入があげられます。 お客様が自分で手続きを行うため、チェックイン業務にかかる負担を軽減できます。 インバウンド対応や自動精算などの機能を搭載しているシステムがある点もポイントです。 ただし、ITシステムの導入には一定の費用がかかります。 また、ホテルのイメージに与える影響にも注意が必要です。

人材紹介サービスを利用する

自社だけで人材を確保できない場合は、人材紹介サービスを利用することもできます。 人材紹介サービスの例として、宿夢が展開する「ヤジョブ」があげられます。 同サービスのおもな特徴は、ホテル、旅館に特化していることと採用企業のニーズにあわせた候補者を紹介していることです。 サービススタッフから支配人まで、ホテル、旅館で働く全職種を対象としています。 宿泊業界で経験を積んだキャリアアドバイザーが、求職者との面接をセッティングしている点や採用後のフォローアップを行っている点もポイントです。 採用活動に苦戦しているホテルであっても、ニーズにマッチした人材を確保できる可能性があります。

人材の育成に力を入れる

人材の育成に注力することも大切です。 スタッフ1人あたりの仕事量を増やせます。 具体的な取り組みとして検討したいのが、業務を標準化してマニュアルを作成することです。 上記の取り組みで、人材の育成にかかる時間と労力を抑えられます。 また、マルチタスク化も図りやすくなるでしょう。

派遣スタッフを採用する

繁忙期にあわせてスタッフを確保したい場合は、派遣スタッフの活用を検討できます。 原則として即戦力のスタッフを派遣してくれるため、人材不足を速やかに解消できる可能性があります。 ポイントは、任せたい業務を明確にしておくことと、受け入れ態勢を整えておくことです。 ただし、ホテル業界では人材不足が慢性化しているため、スタッフをすぐに派遣してもらえないことも考えられます。 他の対策と組み合わせて活用することが大切です。

外国人の採用を強化する

外国人の積極採用も、人材不足を解消するため検討したい対策です。 おもなメリットは、訪日外国人対応を行いやすくなることといえるでしょう。 ただし、在留資格など、採用にあたり注意したい点があります。 専門家のサポートを受けたい方は、宿夢にご相談ください。 人材紹介(ヤジョブ)だけでなく、外国人材紹介(OJT)も行っています。

ホテルの人材不足は経営に影響を与える課題

ここでは、ホテル業界の人材不足について解説しました。 人材不足のおもな原因は、厳しい労働環境です。 採用競争が激しくなっていることも影響しています。 人材不足を放置すると、事業の継続が難しくなったり、ホテルの評判が悪くなったりする恐れがあります。 「仕方がない」と諦めず、対策を講じることが重要です。 ニーズにマッチした人材を確保したい方は、宿夢が展開している人材紹介サービス「ヤジョブ」をご利用ください。 職種を問わず、ご要望に適う候補者をご紹介いたします。 旅館・ホテル専門のコンサルティングなら株式会社宿夢

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コラム監修者

加藤大樹 kato daiki
取締役 副社長

<略歴>

  • 日本47都道府県制覇を5回達成した後、高級宿泊予約サイト「一休.com」に入社。
  • 旅館・リゾートホテルチームの営業と、バケーションレンタル事業の営業責任者を兼務し、ラグジュアリー領域を二刀流で経験
  • 2023年7月に株式会社宿夢の取締役副社長に就任。

弊社「宿夢」は、旅館・ホテル業界の課題解決に特化したコンサルティング会社として、業界の専門知識を活かし、宿泊施設の経営改善をサポートしています。
私たちの目指すのは、旅館・ホテル様それぞれが描く夢を実現すること。
そのために"宿のお困りごとは宿夢へ"をテーマに宿の総合商社を目指しております。

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