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2025.05.02

宿泊施設の予約に活用されるOTAとは?メリット・デメリットも解説 

OTA(Online Travel Agency:オンライン旅行代理店)は、インターネットを介して旅行サービスを提供する代理店です。

日本国内はもちろん、海外へ向かう航空券や宿泊施設、その他のオプションを含めた旅行の手配が24時間365日行えます。

ユーザー自身が好きな旅行商品を検索し、料金やプランによる比較や施設への問い合わせも可能です。

この記事では、ホテルにとって重要なOTAの特徴を中心に、国内での利用率やホテルがOTAを活用するメリット・デメリットを紹介します。

OTAの活用方法についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

ホテルにとって重要なOTAとは?

OTAは実店舗を持たないプラットフォームで、店舗を持たずに旅行代理店業務が行えます。

専任のスタッフ常駐しているサービスではありませんが、リアルタイムに宿泊施設ごとの空き状況を表示し、客室や館内の写真、料金プランなどを掲載して、ユーザーは目的地ごとの施設の検索・予約・支払いを行います。

ホテルにとっては、宿泊客となるユーザー自身がインターネット上で手配を済ませるため、フロント業務の効率化やスムーズな宿泊サービスの提供が可能です。

インターネットを介したサービスのため、実店舗を訪れる必要がありません。

ポイントプログラムやキャンペーンが用意されていることも、OTAの特徴といえるでしょう。

OTAの仕組み

OTAは、莫大な初期費用を必要とせず、実店舗やスタッフを雇う必要もないため、スムーズに利用を開始できる点が特長です。

ホテルや旅館などの宿泊施設がプラットフォームを選び、情報の登録を行って利用を開始します。

施設・客室・館内設備・プラン・料金・空室情報や画像・動画などの情報を登録し、施設側の入力は完了です。

登録する情報は文字だけではなく、館内・館内施設・設備・アメニティの写真や動画も準備しましょう。

OTAへの入力が完了すると、ユーザーが検索をかけた結果として宿泊施設の情報を表示します。

ユーザーが予約を行うと、OTAを介して予約情報が宿泊施設に届きます。

ユーザーが滞在し宿泊料金を支払うと、売上からOTAのプラットフォームにかかる手数料を差し引いた残りの金額が宿泊施設に支払われる仕組みです。

代表的なOTA

日本における代表的なOTAは次のとおりです。

【一休.com】

2000年に提供を開始した、国内約4,400の高級ホテル・高級旅館を扱う宿泊予約サービスです。

富裕層向けのサービスとしても知られており、高級なビジネスホテルを取り扱う一休.comビジネスも提供しています。

【楽天トラベル】

楽天グループが提供するサービスのひとつで、2002年に提供を開始しました。

現在では日本国内の宿泊施設を中心に4万件以上を掲載し、1,400万件以上の口コミも確認することができます。

航空券の取り扱いや海外旅行のツアー・ダイナミックパッケージも予約できます。

【Yahoo!トラベル】

LINEヤフーが提供する旅行商品の検索・販売サービスです(2025年時点)。

豊富な宿泊施設やツアー商品を揃え、レンタカーや高速バスなどの予約のほか、ダイナミックパッケージの提供も行っています。

大手ポータルサイトの情報力を活かしたサービスを強みとしています。

【AirBnB】

世界中の民泊を検索し、予約できるサービスです。

ホテルなどの宿泊施設とは異なり、アパートや古民家などの滞在先が豊富に揃っています。

【じゃらん】

2000年に提供を開始した国内大手の旅行予約サービスです。

国内のホテルや旅館、バスチケットやダイナミックパッケージを扱うほか、航空券や海外ホテル予約サイトとの仲介も行っています。

旅行専門雑誌「じゃらん」で掲載されている商品の予約も可能です。

OTAと通常の旅行会社との違い

旅行会社のように実店舗をもつリアルエージェントでも、自社のホームページやサービスを提供するホームページを運営しています。

旅行会社の特徴は、直接顧客の相談にのったり商品を提案したりする営業活動にあります。

OTAはあくまでもインターネット上でユーザー自身が検索や予約を行いますが、旅行会社ではスタッフが直接顧客の相談や希望を受けて計画していくため、対面形式での営業活動が特徴です。

OTAは店舗を持たない代わりにユーザーが時間や場所に縛られず、自分自身のペースで滞在先や旅行のスケジュールを計画できます。

旅行会社の店舗までが遠い、スタッフとのやり取りがあまり得意ではないといった場合でも、自由度の高い旅が計画できるでしょう。

国内でのOTAの利用率はどのくらい?

一般社団法人日本旅館協会が行った「令和6年度 営業状況等統計調査」によると、OTAを経由して宿泊予約を行った割合は前年度に比べて1.6ポイント増加し、全体平均は44.9%となりました。(※)

6年前の令和元年と比較すると14.0ポイントも増加しており、前年度では減少していましたが、再び増加に転じた状況です。

※参照元:一般社団法人日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」

インバウンドがOTAを利用する割合

同協会が発表した「令和4年度 営業状況等統計調査」では、前年度における訪日外国人観光客の45.3%がOTA経由で予約を行い、宿泊や観光を行ったことがわかりました。(※)

令和元年度の調査で約30%だった割合が45.3%まで上昇していることから、インバウンドのOTA利用率も年々増加傾向にあると考えられます。

※参照元:一般社団法人日本旅館協会「令和4年度 営業状況等統計調査」

ホテルがOTAを活用するメリット

ホテルなどの宿泊施設がOTAを活用すると、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。

初期費用のコストカットや認知度の向上など、いくつかの角度からメリットをチェックしていきましょう。

メリット①初期費用が不要である

OTAサービスの利用には、莫大な初期費用はかかりません。

設備投資の必要がなく、サイトへの新規登録と情報提供を行うのみで、利用を開始できます。

初期費用がかかる場合は事前に費用対効果を計算し、いくつかのサービスを比較する必要がありますが、OTAの場合は費用面での余裕がない状況でも宿泊客を募りやすいサービスといえるでしょう。

メリット②認知度の向上につながる

費用やその他の問題で紙媒体やCMなどの広告を出せなくても、大手のOTAに施設情報を掲載することで直接ユーザーに情報を提供できるため、認知度の向上が期待できます。

施設情報を登録すれば、広告を出稿せずにホテルの存在を周知できます。

ユーザーにとって滞在先の候補になりやすい予約のチャンスを増やせるため、OTAの活用で販路を拡大できる可能性があるのです。

メリット③多様なお客さまにアプローチできる

OTAは国内のユーザーだけではなく、海外からやってきたインバウンドにもアプローチできます。

英語や中国語などの外国語に対応しているOTAに登録すれば、自動的にホテルの情報が外国語で掲載されるため、日本人以外のお客さまが宿泊先を検討しやすくなります。

また、高級感を打ち出すことでラグジュアリーホテルを扱うOTAにも登録できるようになり、国内外の富裕層を顧客として呼び込みやすくなるでしょう。

メリット④業務の効率化が図れる

OTAからユーザーが直接ホテルを予約することで、予約情報は自動的にホテル側へ集められます。

予約情報や変更点などを一元管理できるため、手作業で入力や変更を加える必要がありません。

ホテルの予約業務にかける手間やコストを削減しながら、スタッフは他の業務に注力できるようになり、業務の効率化が期待できるでしょう。

メリット⑤24時間365日予約を受けられる

OTAはメンテナンスを除いて営業時間を限定しないサービスのため、24時間365日無休で予約を受け付けることができます。

インターネットで検索・予約・変更が完結できるため、ホテルにとってはユーザーとのマッチングの機会を逃さず、機会損失のリスクも防げます。

施設で直接受ける予約に加えて、OTAからの流入も受け付けることで、予約数の増加や集客効果を増やせる仕組みです。

ホテルがOTAを活用するデメリット

ホテルがOTAを活用すると、どのようなデメリットが考えられるのでしょうか。

4つの欠点をみていきましょう。

デメリット①手数料が高額になりがち

OTAを利用するためには、宿泊実績に合わせて手数料がかかります。

初期費用や設備投資の必要はありませんが、予約数が増えると手数料もアップするケースがみられるため、利益が圧迫されるおそれがあります。

8〜10%以上の手数料を設定しているため、OTA経由での予約が増えるほど手数料が割高になることもあるでしょう。

ホテルの公式ホームページや旅行代理店を経由すれば、OTA利用による手数料は抑えられるため、いくつかの方法を比較してコストのかからない方法を検討したいところです。

デメリット②差別化が図りにくい

OTAには民泊を含め、数多くの宿泊施設が登録しています。

CMや広告を掲載するサービスではないため、他のホテルとの差別化が図りにくい点がデメリットです。

ユーザーは宿泊先として検討する際に同じようなホテルを比較しなければならず、施設の特徴やサービスを検討する前に料金プランなどで見比べることがあります。

そのようなケースでは低価格競争に陥りやすく、結果として他のホテルとの違いを打ち出しにくくなります。

デメリット③キャンセルのリスクが高まる

OTAは年中無休で検索・予約を行えますが、一定期間中は変更もできるため、キャンセルリスクの高さが欠点です。

ユーザーが他のホテルと自社を比較し、一度予約したにもかかわらず少しでも安いホテルに選び替えてしまうようなケースも考えられるのです。

宿泊日直前でのキャンセルや不泊といった状況も考慮し、ホテル側に損失が出ないようにキャンセルポリシーを定めておかなければなりません。

デメリット④低価格競争が激化する

OTAは手軽に価格帯を絞り込んだり比較したりできるサービスです。

ユーザーが割安な施設を予約するほど、他の施設はさらなる集客のために価格の引き下げを検討します。

こうして宿泊施設間での低価格競争が発生すると、OTAでは安さで勝負する施設が目立つようになります。

一人でも多くの宿泊者を集めようと、サービスにかけるべきコストを削減するなどして、その施設全体での「質の低下」が起きる可能性もあります。

ホテルがOTAを活用する際に覚えておくべきこと

ホテルが集客を行うときには、OTAの利用だけに頼らないことが大切です。

OTAはユーザーにとって利便性の高いサービスですが、ホテル側にとっては他の手段でも集客を行い、いろいろな方法を組み合わせる必要があります。

一例として、自社のホームページ上に予約システムを搭載したり、SNSや広告での発信を行ったりする方法です。

OTA自体もマーケティングに効果を発揮しますが、他のホテルとの差別化が難しく割安感だけで勝負しなければならないなど、施設やサービスの魅力を打ち出しにくい点がデメリットです。

自社サイトの内容やコンテンツを充実させたり、キャンペーンやポイントサービスを実施したりといった方法で差別化を図りながら、自社ならではの戦略を検討しましょう。

ホテルがOTAを上手に活用するためのポイント

ホテルがOTAを上手に活用するためには、3つのポイントに注目しましょう。

ポイント①自社に最適なOTAを選ぶ

OTAには大手企業が運営するサービスや、Webサイトと雑誌媒体をそれぞれ運営するサービスなどがあります。

以下のポイントを踏まえて、自社に適したOTAを選んでみてください。

  • サイトの知名度
  • ターゲット層
  • 利用料・手数料
  • その他の特徴

OTAごとの知名度、ターゲットとしているユーザー層を想定し、自社に合うサービスをピックアップしましょう。

次に、手数料や利用料を比較しながら、その他の特徴としてOTAごとの強みやメリットを比較します。

ポイント②正確な情報を掲載する

OTAサイトには、正確な情報を掲載しましょう。

誤って古い情報を掲載してしまうと、ユーザーが判断に困ってしまいクレームに繋がります。

クレームや悪い口コミは将来的な集客にも悪影響となるおそれがあるため、リアルタイムの情報を確実に掲載するように心がけましょう。

ポイント③自社サイトへの流入を増やす手段として活用する

OTAサイトだけでも広告効果は期待できますが、他社との差別化が難しいため自社サイトの充実も必要不可欠です。

OTAを中心に活用するのではなく、自社サイトを主軸としてコンテンツや情報を充実させながら、OTAはあくまでも自社サイトへ誘導するための手段として活用すると良いでしょう。

自社サイトから予約を取るには?

自社サイトから予約をひとつでも多く取るためには、どのようなポイントを意識すれば良いのでしょうか。

コンテンツを充実させる

自社サイトのコンテンツを充実させましょう。

施設の外観・内観・部屋・設備・アクティビティなど細かく写真や動画を掲載し、OTAにはない情報を提供するようにします。

車椅子対応のスロープやエレベーターの有無、外国語への対応、駐車場の場所や台数といった情報は、幅広い層にアプローチするために欠かせない情報です。

さらに「施設の周辺にどんな観光地があり、どこからアクセスできるのか」「ホテルからのおすすめの観光ルート」といった周辺環境の情報があると、ホテルを予約しようとしているユーザーにとって有益です。

写真や動画をブログ形式で掲載したり、SNSや動画サイトと連動させたりする方法もコンテンツの充実に役立つでしょう。

わかりやすいデザインを心がける

必要なコンテンツをわかりやすい位置に掲載し、施設の案内や説明を端的にして、全体的にまとまりのあるデザインに統一します。

ボタンやバナーは見やすく押しやすい位置に、スマートフォンサイトの公開や言語の切り替えボタンをわかりやすい位置に表示し、ユーザー目線のデザインにすると好印象を与えられます。

SNSや広告も積極的に活用する

X(旧Twitter)やInstagram、その他のSNSを使い、ホテルの魅力や更新情報を多くのユーザーに周知する方法も効果的です。

広告には、インターネット上に掲載するものと、チラシや雑誌・新聞のようなオフラインの媒体に掲載するものとに分かれており、ホテルの情報を発信する際に役立ちます。

他社との差別化にも貢献するため、積極的に活用しましょう。

プロに相談する

集客やマーケティングの方法に迷ったときは、プロに相談しましょう。

OTAを活用する方法、イベント・季節ごとのプロモーションの活用や自社サイトのSEO対策について、幅広く相談することができます。

OTAを活用してホテルの経営や集客に活かす

今回は、ホテルや旅館が利用するOTAの特徴とメリット・デメリットを紹介しました。

OTAは日本国内はもちろん、海外でも広く展開されているサービスです。

年々利用率が上がっており、ユーザーにとって利便性の高いサービスであることから、今後も一定の利用率や需要が期待できます。

OTAだけに依存する必要はありませんが、ホテルが集客を行ううえでOTAをうまく活用すれば、高い集客効果が期待できるでしょう。

宿夢では、Webコンサルティングやリスティング広告の運用を手掛けています。

集客に関するコンサルティングやSNSの運用についても相談を受けておりますので、ぜひこの機会にご相談ください。

旅館・ホテル専門のコンサルティングなら株式会社宿夢

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コラム監修者

加藤大樹 kato daiki
取締役 副社長

<略歴>

  • 日本47都道府県制覇を5回達成した後、高級宿泊予約サイト「一休.com」に入社。
  • 旅館・リゾートホテルチームの営業と、バケーションレンタル事業の営業責任者を兼務し、ラグジュアリー領域を二刀流で経験
  • 2023年7月に株式会社宿夢の取締役副社長に就任。

弊社「宿夢」は、旅館・ホテル業界の課題解決に特化したコンサルティング会社として、業界の専門知識を活かし、宿泊施設の経営改善をサポートしています。
私たちの目指すのは、旅館・ホテル様それぞれが描く夢を実現すること。
そのために"宿のお困りごとは宿夢へ"をテーマに宿の総合商社を目指しております。

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