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2025.05.02

ホテルに「リピーター」の存在が重要な理由と獲得のための方法

ホテル業界では、国内の旅行者だけではなく海外からのインバウンドやワーケーションによる宿泊者など、さまざまな層にアプローチをかけて集客を図っています。

一度でも施設に滞在した人は顧客として扱われますが、一度限りではなく「リピーター」となって、何度も施設を利用してほしいところです。

この記事では、ホテル業界におけるリピーターの数・重要とされている理由・ホテル側が意識すべきポイントを紹介します。

お客さまが施設に求めることも取り上げていますので、リピーター獲得の参考にしてください。

ホテル業界におけるリピーターはどのくらいいる?

株式会社ネオマーケティングが2023年に20歳以上の男女を対象に実施した調査によると、男女ともに同じシティホテル・リゾートホテル・旅館をリピートした経験は66.8%となりました。(※1)

財団法人日本交通公社が2007年に実施した調査によると、宿泊者数に占めるリピーターの比率は「10%以上 30%未満」との回答がもっとも多く、調査全体の37.7%を占めていました。(※2)

以上の調査結果を踏まえると、20歳以上の男女の約7割がリピーターとなり、宿泊施設全体では1〜3割がリピーターで占められていることから、少なくない割合の宿泊客がリピーターであることがわかります。

※1参照元:株式会社ネオマーケティング「ホテル・旅館に関する調査」

※2参照元:財団法人日本交通公社「旅館ホテルのリピーター比率と客室稼働率、宿泊単価、予約経路」

ホテルを経営する際にリピーターが重要な理由

ホテルの経営においては、新規だけではなくリピーターの獲得も重要な要素となります。

なぜ重要とされているのか、6つのポイントをみていきましょう。

集客にかかるコストを抑えられるため

新規の顧客を獲得するためには、広告・宣伝・ポイントプログラム・キャンペーン・Webマーケティングなどさまざまな営業活動を実施しなければならず、相応のコストがかかります。

一方、リピーターはすでにホテルに宿泊しサービスを体験しているため、ゼロからの広告宣伝や信頼構築の必要がありません。

リピーター自身がホテルに満足すれば、友人や家族にホテルを勧め、口コミ効果による自然な集客につながる可能性があります。リピーターを一人でも増やすことが広告効果に貢献するとも考えられるでしょう。

売上が安定するため

リピーターは2回以上ホテルを利用する人のことで、ホテルにとっては収益アップにつながる存在です。

さらに、1ヶ月に1回など継続的にホテルを利用するリピーターは、ホテル側にとって予測可能な収入をもたらします。

リピーターは宿泊日当日ではなく事前に予約を行うケースも少なくありません。

そのため、予測可能な収入として安定した収益予測に寄与します。新規と比べて直前のキャンセルリスクも低いため、客室の稼働を効率的に管理することができます。

リピーターのなかには知人や家族を伴ったり2回目以降の利用から新しい付帯サービスを利用したりするケースもあります。

ホテルにとっては収益アップが期待できる存在です。

ブランド力の向上につながるため

ホテルのサービスや体験に慣れ親しんだリピーターは、SNSや口コミで友人・家族・第三者にホテルの魅力を伝える可能性があります。

ポジティブな口コミほどホテルにとって良い広告効果をもたらすため、CMやその他の広告媒体に頼らずにブランドイメージを向上させられる可能性があります。

また、リピートを繰り返すほどホテルのブランドロゴやキャラクターなどのブランド要素を目にする機会が増えるため、ホテルのアイデンティティを理解したリピーターがSNSや口コミで好意的に発信するようなケースも期待できるでしょう。

口コミによる宣伝が期待できるため

リピーターの口コミによる宣伝は、ホテルの経営にとって強力な集客ツールになります。

ホテルでの滞在や暮らしについてリアルな実体験をもって発信するため、口コミを見た人にとっては信頼性の高い情報となり、期待感をもたせる効果が期待できるのです。

広告のような作られた情報ではなく、リピーターの口コミは個人の実体験に基づいたものです。

潜在顧客を惹きつける力が高く、SNS・レビューサイト・OTAの口コミコーナーなどで高い影響力をもちます。

口コミの内容によっては潜在顧客だけではなく、滞在先を漠然と探している人や旅行先を決めかねているような人にもアプローチするため、広告よりも強力な宣伝効果を発揮するのです。

宿泊単価を上げてもらえる可能性があるため

リピーターによっては、2度目の宿泊では部屋のグレードを上げたりレストランやその他の施設・サービスを利用したりといった方法で、宿泊単価を上げる可能性があります。

ホテルに満足しているリピーターほど料金にこだわらず、通常よりも割高な宿泊単価になるケースがあるのです。

リピーターに対象を絞り込み、特別な体験やサービスを提案することもできます。

リピーターはより良い体験を求めてグレードを上げたり、通常よりも高いプランを受け入れたりと、高い訴求効果が期待できるでしょう。

新たなビジネスのヒントを得られる可能性があるため

リピーターからは、ホテルの運営やビジネスに役立つ新たなヒントが得られる可能性があります。

その理由は、リピーター自身がホテルを利用して得た「生の声」を反映するためです。

リピーターはホテルの長所だけではなく短所(改善点)にも気づきます。

設備の故障や老朽化、サービスを受けた際に気づいた点を直接指摘したり、メールなどで意見したりします。

どのような形であれ、フィードバックされた情報を基にすればサービスや施設の改善が可能です。

さらに、リピーターの行動や好みを分析すれば、顧客が求めるものを把握しやすくなります。

リピーターが何を好んでいるのかを把握すれば、ホテル側は新たな強みに気づける可能性があります。

得られた情報を新たなマーケティング戦略に活かす方策も、ホテルの経営や運営に役立てられるでしょう。

リピーターになってもらうためにホテルが意識すべきこと

お客さまにリピートしてもらうためには、ホテル側が4つのポイントを意識する必要があります。

どのような点をチェックすべきなのか、みていきましょう。

お客さまのニーズを満たす存在でありつづける

「スムーズにチェックインしたい」「衛生的で快適な部屋でくつろぎたい」「食事の内容を複数の選択肢から選びたい」といったさまざまなニーズを集め、ホテルで実現できるものを提供しましょう。

お客さまのニーズを満たす存在であるほど、ホテルの価値は損なわれず重宝されます。

ビジネスや観光で訪れた方が一度でも満足感を感じると、「次もあのホテルに泊まろう」と、定宿に選ぶ可能性もあります。

さらに、宿泊の最終日に笑顔で接客するなどの感動を与えられれば、満足度の高い宿泊体験に加えて感動の要素が加わり、リピート利用の可能性が高くなります。

お客さまに新たな宿泊の価値を与える

宿泊の価値とは、そのホテルで体験できるさまざまなサービスや配慮、実体験のことです。

宿泊でどのような価値を感じるかはお客さまによって異なりますが、宿泊費が割安になるような施策は効果が期待できるでしょう。

具体的にはリピーター特典・お得な会員制度(会員ランク制度)・キャンペーンの提供といった方法で、お得感のある宿泊体験を提供します。

無料特典・お礼メールや口コミへの返信・ホテルマンによるおもてなしの対応でも、満足度の向上に貢献します。

お客さまとのつながりを維持する

リピーターを獲得するためには、お客さまとのつながりを維持する工夫が必要不可欠です。

一度でも宿泊した方には定期的にコンタクトをとりましょう。

ホテルからのお知らせや地域のイベントの紹介といった情報提供を行い、ホテルへの滞在を検討できるように誘導します。

メールやSNSの更新、あるいは紙媒体のDMを送付するなどの方法で、つながりを途切れさせないようにすることが大切です。

ローカルのお客さまとのつながりも大切にする

ホテルはさまざまな状況や背景をもつお客さまを迎える場所です。

インバウンドや国内外の日本人観光客、ビジネスマンのほかにも、地域の人々が宿泊や滞在を楽しむこともあります。

海外からやってくるお客さまを優先して多言語対応や外国人スタッフを雇い入れる施策もリピーター獲得には効果的ですが、地元の人々とのつながりをもつことが経営に良い影響を与える場合もあるのです。

一例として、ホテルでのステイ(滞在)プランを設けることで、宿泊よりも割安な料金で一人の時間を満喫できるため、自宅以外で気分転換や休息をとりたいローカルのお客さまを呼び込みやすくなります。

ホテルに宿泊するお客さまが求めることとは

ホテルに宿泊するお客さまは、どのようなニーズを抱えているのでしょうか。

宿泊・設備・接客の3つに分けてみていきましょう。

心ゆくまで楽しめる宿泊

快適な宿泊体験を提供するためには、設備だけではなくホテル独自のカラーやおもてなしを打ち出すことも一つの方法です。

ロケーションに恵まれているホテルでは周辺環境と併せてホテルの魅力をアピールできますし、「癒し(リラクゼーション)」など特定のコンセプトを設けて、そのコンセプトに沿った設備やサービスを展開する方法も選べます。

充実した設備

館内と室内の設備が充実していることは、お客さまの多くが潜在的に抱いているニーズです。

古いホテルは新しいホテルに比べて設備面で劣りやすいものですが、空気清浄機やズボンプレッサーのように後付けで設置できる設備を導入したり、充電設備やタブレットなどのデバイス、アメニティを充実させたりすることで、心地よい宿泊体験が提供できます。

「スイッチが押しやすい場所にある」「部屋を自由に換気できる」といった室内の自由度の高さも、設備の充実度を実感してもらえるポイントです。

心地のよい接客

接客は、ホテルスタッフとお客さまの間で行われるコミュニケーションです。

対面で行われるため、ホテルのイメージを左右する重要な要素といえます。

常に相手の立場に立った話し方や対応を心がけ、言葉遣いや表情にも気を配るなどの配慮が心地のよい接客につながります。

お客さまといっても外国人や小さなお子さんなどが含まれたり、犬や猫のようなペットを同伴したりすることもあります。

それぞれのお客さまがポジティブな印象を抱けるような接客対応を心がけましょう。

リピーターを獲得するためにホテルは何をすればよい?

ホテルは、リピーターを獲得するためにどのようなことを意識すべきなのでしょうか。

現状の把握からターゲット層の設定、情報発信の重要性などについてみていきましょう。

現状を把握する

集客率や利用客の客層を分析し、予約時間・予約媒体・予約内容を細かく確認します。

繁忙期と閑散期に現れる特徴や改善点があれば、内容をしっかりと把握しましょう。

現状にどのような課題があるのかを明らかにすることで、対策を検討しやすくなります。

ホテルにある課題が洗い出されたら、改善のためにできることを考えていきます。

競合の宿泊施設が近隣にあるときは、競合施設が達成しているが自社ではまだ達成できていない部分を中心に、改善点を洗い出しましょう。

競合施設のもつ強みと、自社にしかないカラーや強みも整理し直すと、差別化がしやすくなります。

ターゲットを明確にする

ホテルに宿泊するターゲット層を明確にしましょう。

地域や立地条件、周辺環境によってターゲットとなる客層は大きく変化します。

一例として、国際空港の近くにあるホテルはインバウンドが多く利用する傾向にありますが、ビジネスマンや海外へ観光に向かう日本人の利用も見込むことができます。

ターゲットは何種類かのタイプに分けて絞り込みましょう。

従業員の理解を得る

リピーターを獲得するためには、ホテルスタッフの協力が不可欠です。

スタッフ間で何が重要なのかを共有することで全体の足並みが揃い、宿泊に訪れたお客さまへアプローチしやすくなります。

スタッフ自身から改善策が意見されるケースもあります。

「ここをこうすればより良くなる」といった具体的な案も、ホテル業務を改善する際の参考になるでしょう。

積極的に情報を発信する

公式サイトやSNS、その他の媒体を使って積極的に情報発信を行いましょう。

自社の魅力を打ち出すことで、潜在顧客や宿泊を漠然と検討している層にもアプローチできます。

宿泊の予定がない層に対しても、ホテルの魅力を打ち出すことで「泊まってみたい」と思わせられるため、情報発信は定期的かつ継続的に実施しましょう。

おもてなしのスキルを向上する

接客を担当するスタッフには、挨拶や接客態度などの教育を施します。

さまざまな立場や人種の宿泊客が訪れるため、必要なおもてなしはマニュアル化しながら、スタッフ自身の配慮も行き届くようにスキルアップを図りましょう。

設備を充実させる

老朽化した設備の入れ替えや修繕を行い、快適な環境を整えましょう。

清潔で衛生的な宿泊環境は、リピーターになりたいと思ってもらえる決め手のひとつです。

トイレ・浴槽・洗面台などの水回りは老朽化とともに不衛生になりやすいため、清潔かつ汚れにくい設備を導入することをおすすめします。

部屋の空調や照明、TVや通信にかかわる設備も古いものから新しいものへと順次入れ替えを行いましょう。

特典を用意する

リピーターを獲得するための試みとして、特典の提供が挙げられます。

宿泊の割引券やレストラン・料亭の食事券、その他のサービスに関するクーポンがその一例です。

リピーターがどんな特典を求めているかをリサーチすることで、ニーズに合った特典が準備できます。

口コミに返信をする

お客さまへのお礼メールや口コミを書いてくれた方への返信は、ホテルが顧客に誠実に向き合っていることをアピールできる方法です。

スタッフの言葉で返信を書くことで気持ちが伝わりやすくなるため、定型文はできるかぎり使わないようにしましょう。

施設とのコミュニケーションにおもてなしの心を感じれば、また利用したいと感じてもらえるかもしれません。

ホテルコンサルティングの支援を受ける

ホテルコンサルティングとは、経営・運営・集客・設備・OTA管理業務・インバウンド対策と幅広い内容について現状の分析を行い、施策の提案や実行支援を行うことです。

集客の問題点や接客オペレーションの改善案についても相談できるため、リピーターの獲得で悩んだ際にはぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

ホテルがリピーターを獲得するにはリサーチや工夫が重要

今回は、ホテル業界におけるリピーターの数や、リピーターが重要とされている理由、お客さまをリピーターにするためのポイントを紹介しました。

お客さまが顧客として宿泊施設を利用するときは、必ず目的や背景情報があります。

ホテル側はニーズの把握に努め、さらに満足度を高めるサービスや準備を整えることが大切です。

宿夢では、大手宿泊予約サイト(OTA)の事業責任者経験や営業・企画・デジタルマーケティング業務経験者が揃った宿泊施設にかかわるプロフェッショナル集団です。

ホテルの魅力や質を高めるための課題解決をサポートしていますので、ぜひこの機会にご相談ください。

旅館・ホテル専門のコンサルティングなら株式会社宿夢

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コラム監修者

加藤大樹 kato daiki
取締役 副社長

<略歴>

  • 日本47都道府県制覇を5回達成した後、高級宿泊予約サイト「一休.com」に入社。
  • 旅館・リゾートホテルチームの営業と、バケーションレンタル事業の営業責任者を兼務し、ラグジュアリー領域を二刀流で経験
  • 2023年7月に株式会社宿夢の取締役副社長に就任。

弊社「宿夢」は、旅館・ホテル業界の課題解決に特化したコンサルティング会社として、業界の専門知識を活かし、宿泊施設の経営改善をサポートしています。
私たちの目指すのは、旅館・ホテル様それぞれが描く夢を実現すること。
そのために"宿のお困りごとは宿夢へ"をテーマに宿の総合商社を目指しております。

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