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2025.05.02

ホテル・旅館の経費削減|削減できる経費10種類と注意するべき点

経費削減は、ホテル・旅館にとって避けられない取り組みです。

経営状態に不安がない事業者様も例外ではありません。

ホテル・旅館の経営は、不安定になりやすいためです。

このことは、コロナ禍を振り返れば理解できるでしょう。

ここでは、ホテル・旅館が削減できる経費、削減するべきではない経費を紹介するとともに、ホテル旅館が経費削減に取り組みたい理由、経費削減に取り組むときに注意したいポイントなどを解説しています。

経費の見直しを進めている方は、参考にしてください。

ホテル・旅館の運営に必要な経費

ホテル・旅館の運営に必要な経費は以下の2つにわかれます。

【経費の種類】

  1. 固定費
  2. 変動費

効果的に経費を削減するため、両者の違いを理解しておくことが大切です。

それぞれの概要を解説します。

固定費

ホテル・旅館の売上高や宿泊者数にかかわらず、一定の期間で発生する経費です。

ほぼ一定の金額がかかり続けるため、固定費と呼ばれています。

固定費の具体例は以下のとおりです。

【固定費の例】

  • 正社員の人件費
  • 家賃
  • 光熱費
  • 減価償却費

一般的に、固定費は経費削減の効果が高いと考えられています。

その効果が長期にわたり継続するためです。

ただし、あたり前のようにかかり続けるため、経費削減の対象になりにくい傾向があります。

変動費だけに注目せず、固定費も最適化を図ることが大切です。

変動費

ホテル・旅館の売上高や宿泊者数に比例して増減する経費です。

売上高などに応じて増えたり減ったりするため変動費と呼ばれています。

変動費の具体例は次のとおりです。

【変動費の例】

  • アルバイト・パートタイマーの人件費
  • 食材費
  • 衛生費
  • 消耗品費

宿泊者数が増えると、食材費、衛生費、消耗品費も増加します。

したがって、これらの経費は変動費に分類されるのです。

変動費は、固定費に比べて目立ちやすい傾向があります。

売上高が増えると、変動費も増えるためです。

ただし、金額だけに着目して経費削減の対象にすることはおすすめできません。

必要性を踏まえて、削減の可否を検討することが大切です。

ホテル・旅館の運営で削減できる経費は?

ホテル・旅館は、次の経費を削減できる可能性があります。

①光熱費

ホテル・旅館の運営にかかった電気代やガス代を指します。

いくつかの方法で削減が可能です。

定番の方法として、電気料金プランの見直しや新電力会社の利用があげられます。

ポイントは、電力の利用状況にあわせて最適化を図ることです。

ホテル・旅館に合っているプラン、電力会社を選ぶことが大切といえるでしょう。

空調や照明の使い方を見直すことも、光熱費の削減につながります。

ホテル・旅館で消費する電力のうち、29%を空調、18%を照明が占めているためです(夏季の点灯帯(17時頃))。

具体的な対策として以下のものがあげられます。

【検討したい対策】

  • 照明をLEDに交換する
  • 客室以外の照明を間引く
  • 使用していない部屋の照明を消す
  • 使用していない部屋の空調を停める
  • 空調の設定温度を夏季は上げる、冬期は下げる

取りくみやすい対策から始めることが大切です。

出典:(PDF)経済産業省「下記の省エネ・節電メニュー」

②人件費

ホテル・旅館がスタッフに対して支払う給与・賞与などです。

正社員に支払う人件費は固定費、アルバイト・パートに払う人件費は変動費に分類されます。

人件費は、業務の一部をアウトソーシングすることで削減できる可能性があります。

アウトソーシングにかかる費用と人件費を比較することが大切です。

あるいは、ICTを活用した業務の自動化、省力化、省人化も検討できます。

一例として、スマートチェックインシステムがあげられます。

導入コストはかかりますが、長期的にみると人件費を削減できるケースが多いでしょう。

③リース費用

リース契約にともなうリース料金を指します。

リース契約のおもなメリットは、まとまった導入費用がかからないことです。

ホテル・旅館がリース契約で賃貸する機器・設備として、コインランドリー・自動精算機・自動車などがあげられます。

ただし、機器・設備の料金にリース料率を乗じたリース料金を支払うため割高です。

機器・設備の購入やレンタルを検討すると、経費を削減できる可能性があります。

長期的に使用するものは購入(またはリース)、短期的に使用するものはレンタルが向いていると考えられています。

④衛生費

環境保全などにかかる経費です。

具体例として、クリーニング代や清掃代があげられます。

いずれも、作業の内製化や外注先を見直すことで削減できる可能性があります。

ただし、リネンサプライ業者を変更する場合は注意が必要です。

外注先が在庫をもっているため、リネン類にホテル・旅館のロゴマークを入れていると簡単に変更できません。

リネン類からロゴマークを取り除くなどの対策が必要になることもあります。

⑤通信費

業務で使用する通信に関連する経費です。

具体例として、固定電話の通話料、携帯電話の通話料、インターネット関連費用、切手代などがあげられます。

通信費も、さまざまな方法で削減できる可能性があります。

たとえば、携帯電話のプランを利用方法にあわせて最適化する、利用していないオプションを解約するなどが考えられるでしょう。

本部で一括契約して割引率を高めることや携帯電話とインターネットをまとめたセット割りを利用することも検討できます。

通信手段ごとの利用状況を明らかにしたうえで、対策を検討することが重要です。

⑥食材費

料飲サービスで使用する食材の購入にかかる経費です。

夕食・朝食が飲料サービスの中心といえるでしょう。

予約数にあわせて仕入れ量を調整するとロスを減らせます。

メニューを工夫して、余った食材を活用することも大切です。

たとえば、夕食で使いきれなかった食材を朝食に用いるなどが考えらえます。

もちろん、原価のチェックも欠かせません。

原価が高い食材を使用しているメニューは変更を検討しましょう。

仕入業者の見直しも有効な対策になる可能性があります。

相見積もりをとると、価格交渉を行いやすくなります。

⑦消耗品費

消耗品の購入にかかる経費です。

消耗品の例として、カミソリ、ヘアブラシ、歯ブラシなどのアメニティ、ボールペン・ノート・ハサミなどの事務用品があげられます。

アメニティ代は、カミソリ、ヘアブラシなどを希望するお客様だけに配布すると削減できます。

この方法で、補充にかかる人件費を削減できる点もポイントです。

事務用品代は、一括購入したり、相見積もりをとったりすることで抑えられるでしょう。

当然ながら、スタッフの意識改革も欠かせません。

コスト意識を高めることで、購入する事務用品の数を減らせます。

⑧設備投資費

新しい設備やシステムなどの導入にかかる経費です。

具体例として、レストランの拡張やITシステムの導入などがあげられます。

設備投資の特徴は、大きな金額がかかりやすいことです。

したがって、経費削減の対象になりやすいといえるでしょう。

ただし、経費を削減する場合は、その効果を見極めることが大切です。

生産性を大幅に高められるなど、投資額以上の効果を見込めることもあります。

予算に余裕がない場合は、活用できる補助金を探すとよいかもしれません。

事業再構築補助金やIT導入補助金などを活用できる可能性があります。

⑨外注委託費

業務の一部を外注先へ委託した際に発生する経費です。

おもな業務として、客室の清掃、フロント業務、レストランの調理などがあげられます。

ホテルの外注委託費は、人件費が中心といえるでしょう。

具体的な金額はケースで異なりますが、自社スタッフの人件費より外注委託費のほうが原則として割高です。

自社スタッフの割合を増やすと、外注委託費を削減できる可能性があります。

ただし、ホテル業界では人材不足が慢性化しているため、十分な自社スタッフを確保できる保証はありません。

採用活動がうまく進まない場合は、価格交渉を行ったり、委託する業務の範囲を見直したりするとよいでしょう。

⑩広告宣伝費

不特定多数の方に、ホテル・旅館をアピールするための広告、宣伝にかかる経費です。

一昔前よりも広告宣伝の手法が増えたため、他の経費に比べて削減しやすいと考えられています。

具体的には、高額な費用がかかるテレビCM、雑誌広告から、費用を管理しやすいWeb広告に切り替えるなどが考えられます。

あるいは、無料で始められるSNSやホテル・旅館の公式サイトを活用して、ターゲット層にアプローチすることも可能です。

広告宣伝に紙媒体を使用している場合は、広告代理店や印刷業者を見直すことでも経費を削減できます。

ホテル・旅館に経費削減が必要なワケ

ホテル・旅館は、建物や設備の維持、管理などで多額の経費がかかります。

さまざまな要因で、需要も変動しやすいといえるでしょう。

ホテル・旅館の需要に影響を与えた近年の出来事として、新型コロナウイルス感染症の流行、円安による訪日外国人客の増加があげられます。

以上の特徴を備えるため、ホテル・旅館の経営は不安定になりやすいといえます。

良好な経営状態が、長く続く保証はありません。

したがって、日ごろから経費削減に努めて、経営の安定化を図る必要があります。

ホテル・旅館が削減してはいけない経費はある?

ただし、闇雲に経費を削減することはおすすめできません。

プラスよりマイナスの影響が大きくなるためです。

削減する経費を見極める必要があります。

一般的に、人件費はできるだけ削減しないほうがよいと考えられています。

スタッフがやる気を失ったり、質の高いサービスを提供できなくなったりするためです。

OTA経由での予約数が多い場合は、OTA手数料の削減も慎重に行わなければなりません。

経営に悪影響を及ぼさないため、他の集客チャネルを強化するなどの準備が必要です。

ホテル・旅館が経費を削減する際に気をつけたいこと

ここからは、ホテル・旅館が経費削減に取り組む際に意識したいポイントを解説します。

サービスの質が低下しないように注意する

経費削減にともない、サービスの質が低下しないようにしましょう。

期待していたサービスを受けられないと、お客様はがっかりしてしまいます。

たとえば、食材費を削った影響で、食事のレベルが落ちると、顧客満足度は低下するはずです。

ホテルの評判が悪くなったり、リピート率が下がってしまったりすることも考えられます。

サービスの質に関わらない経費から削減していくことが大切です。

オペレーションの組み方を見直す

経費削減の影響で、スタッフの負担が増すこともあります。

スタッフにしわ寄せがいくと、サービスの質が低下したり、離職を招いたりする恐れがあります。

結果的に、マイナスの影響が大きくなることもあるのです。

負担が増す場合は、ITシステムなどを活用して業務の自動化、省力化を図るとよいでしょう。

あるいは、教育に力を注いだり、人員配置を最適化したりすることも有効です。

ブランド力を損なう可能性がある経費の削減は避ける

経費削減が、ホテル・旅館のブランドに与える影響にも注意が必要です。

削減する経費を誤ると、ブランド価値を損なう恐れがあります。

たとえば、ハイグレードなサービスを提供していたホテルが、衛生費を削減するためロゴ入りの高級タオルからロゴなしの格安タオルに変更すると、これまで築いてきた信頼を失ってしまうでしょう。

ホテル・旅館のブランディング戦略を踏まえて、削減する経費を選択することが大切です。

削減すべき経費をきちんと判断する

ここまでの説明でわかるとおり、経費は削減しやすいものと削減しにくいものにわかれます。

一般的に、変動費の削減は、お客様に与える影響が大きいと考えられています。

また、経費削減の効果も原則として短期間で終了します。

したがって、ホテル・旅館は、固定費の削減を優先するべきといえます。

経費削減でホテル・旅館の経営安定化を目指しましょう

ここでは、ホテル・旅館の経費削減について解説しました。

対象になるおもな経費として、光熱費、人件費、リース費用などがあげられます。

経費削減を図ることで、ホテル・旅館の経営が安定しやすくなります。

ただし、とにかく削減すればよいわけではありません。

サービスの質が低下したり、ブランド価値を損なったりする恐れがあるためです。

ホテル・旅館の経営やお客様に与える影響を考えたうえで行動することが大切です。

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コラム監修者

加藤大樹 kato daiki
取締役 副社長

<略歴>

  • 日本47都道府県制覇を5回達成した後、高級宿泊予約サイト「一休.com」に入社。
  • 旅館・リゾートホテルチームの営業と、バケーションレンタル事業の営業責任者を兼務し、ラグジュアリー領域を二刀流で経験
  • 2023年7月に株式会社宿夢の取締役副社長に就任。

弊社「宿夢」は、旅館・ホテル業界の課題解決に特化したコンサルティング会社として、業界の専門知識を活かし、宿泊施設の経営改善をサポートしています。
私たちの目指すのは、旅館・ホテル様それぞれが描く夢を実現すること。
そのために"宿のお困りごとは宿夢へ"をテーマに宿の総合商社を目指しております。

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