• コラム

2025.05.02

ホテルに求められているインバウンド対策とは?実施する際のポイント

新型コロナウイルスによる入国規制が解除された影響を受け、インバウンド観光客が増えています。

ホテルの需要は高まっていますが、どのように対応すべきかわからず、困っている方もいるのではないでしょうか。

そこで、ホテルのインバウンド対策を実施していくにあたり押さえておきたいインバウンド事情や、ホテルに求められていることなどを解説します。

具体的に対策を行う際に意識しておきたいポイントもわかるようになるので、ぜひ参考にしてください。

インバウンドの宿泊者数

国土交通省観光庁による宿泊旅行統計調査を見てみると、以下のように旅行者数が推移しています。

 

2024年 

2023年 

日本人を含む延べ宿泊者数 

5,844万人泊 

(前年同月比+4.1%) 

6億1,747万人泊 

(前年比+37.1%) 

外国人延べ宿泊者数 

10月:1,582万人泊 

(前年同月比+26.6%) 
11月:1,469万人泊 

(前年同月比+22.0%) 

1億1,775万人泊 

(前年比+613.5%) 

 

参考:国土交通省 観光庁:宿泊旅行統計調査(2024年(令和6年)4月・第2次速報、2024年(令和6年)5月・第1次速報及び2023年(令和5年)・年間値(確定値))

インバウンドは年々上昇傾向にあり、今では観光地に行くと日本人よりも外国人旅行者の方が多いケースも珍しくありません。

これに伴い、ホテル需要が急回復している状況です。

新型コロナウイルスの流行が落ち着いたことに加え、円安がインバウンド需要の追い風となっています。

この傾向は今後も続くと予想されている状況です。

ホテルにインバウンドへの対策が求められる理由

今後さらに増加するインバウンドに備えるためには、ホテルでも対策が必要です。

その理由として、以下が挙げられます。

新規のリピーターを獲得するため

インバウンド対策をとることは、新規のリピーターを獲得するきっかけにもなります。

観光自体は楽しかったものの、ホテルの対応に問題があったために嫌な思い出が残ってしまったことがある方もいるのではないでしょうか。

ホテルなど宿泊施設の対応は、旅行の満足度を大きく左右するポイントです。

対応が悪く、満足してもらえなければリピートはありません。

そのため、また来たいと思ってもらうためには外国人に求められるインバウンド対策が必要です。

日本独自の文化が人気のため

インバウンドで特に人気が高いのは、日本料理や温泉といった日本独自の文化です。

他にも、部屋に敷かれた畳や着物、季節行事など、日本らしさを感じさせる文化を楽しむために多くの外国人観光客が日本を訪れます。

日本人にとっては当たり前のことでも外国人からすれば新鮮に感じることも多いでしょう。

そういった日本独自の文化をより魅力的に感じてもらうために、ホテルには受け皿としての役割があります。

そもそもどういったことが外国人に好まれるのか、どのような体験をしたいと考えているのかを理解しなければなりません。

食事に和の要素を取り入れたり、館内のインテリアに和の演出を加えたりするのも良いでしょう。

全く何も対応していないと競合のホテルに客が流れてしまう可能性もあります。

日本独自の文化を楽しめるようなインバウンド対策をとりましょう。

地域創生にもつながるため

インバウンド対応を強化することにより、ホテルだけではなく地域全体の経済が活性化します。

これは、地域創生につながるポイントです。

宿泊客が地域の飲食店などを利用するようになれば、地域全体がより豊かになり、さらに魅力的な観光地にもできます。

また、SNSなどでホテルや観光地の魅力を発信してもらえれば、知名度向上にもつながるでしょう。

インバウンド対策を取っておくことは、ホテルと地域のどちらにとっても重要なことといえます。

インバウンドは日本国内のホテルに何を求めているのか

インバウンド観光客にとって魅力的に感じてもらえるような対応をしていくためには、何が求められているのかを理解することが欠かせません。

インバウンド観光客が日本国内のホテルに求めているのは以下のようなポイントです。

外国語への対応

近年では必須とも言える状況になっているのは、外国語への対応です。

どれだけ優れたサービスを提供していたとしても全く言葉が通じないようであれば、お互い意思のやりとりができません。

結果として顧客に対し不満を抱かせてしまうこともあるでしょう。

ホテルに不満を感じた場合は、マイナスの評価をSNSや口コミサイトなどで拡散されてしまう恐れがあります。

外国人観光客は実際にその施設を訪れた人のSNSや各種口コミ情報を参考に日本を訪れているので、ブランドイメージ低下につながる対応をしないように十分気をつけておかなければなりません。

英語に対応できるフロントスタッフを置くほか、可能であればニーズが高まっている中国語や韓国語、タイ語などに対応できるスタッフを採用しておきましょう。

直接コミュニケーションを取る際だけではなく、館内案内やレストランメニューなども多言語表記しておくことが重要です。

すぐに外国語が堪能なスタッフを充実させるのは難しいため、翻訳アプリや自動翻訳デバイスの導入も検討しましょう。

安全性と快適性

インバウンド観光客がホテルなどの宿泊施設に対して求めているのは、安全性と快適性です。

日本は、外国から「非常に安全で清潔な国」と評価されています。

そのため、少しでも安全性に問題があったり、清潔感に欠けていると思われたりすると大きなマイナス評価になるので注意しましょう。

何かあったときのため、防災対策も重要です。

避難経路の案内を多言語表記するなどして安心感につなげましょう。

キャッシュレスへの対応

日本ではまだまだ現金決済の方も多くいます。

ですが、アジア地域の方を中心とした外国人の多くはクレジットカードやスマホ決済といったキャッシュレス決済が主流です。

ホテルで現金しか使えない場合は不便に感じられてしまうこともあります。

日本政府観光局(JNTO)のデータを見てみると、2024年時点では韓国、中国、台湾の順で多くの外国人が訪れていました。(※1)

これらの国では、以下のようなキャッシュレス決済が主流となっています。

【国別キャッシュレス事情】

  • 韓国:クレジットカード決済
  • 中国:WeChat Pay・AlipayなどのQRコード決済
  • 台湾:クレジットカードやLINE Pay、QRコード決済

ここからもわかるように、国によってシェアの高い決済サービスが異なります。

クレジットカードやデビットカードは多くの国で共通して浸透していますが、この他にもスマートフォンを使ったコード決済も人気です。

これに対応しておきましょう。

(※1)

参考:日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計※時系列推移表国籍/月別 訪日外客数(2003年~2025年)

通信環境

ホテルで観光予定地の情報を調べたり、SNSでの旅行に関する情報を発信したりする人は多くいるので、通信環境が整備されていることはとても重要です。

日本に長期滞在する方はホテルでパソコンを使った仕事をすることも多いので、Wi-Fi環境を整えておきましょう。

全居室で問題なくWi-Fiが使えることはもちろんのこと、共用スペースでの無料Wi-Fiも求められます。

ただ使えるだけではなく、通信速度と安定性に優れていることも重要です。

宿泊者が問題なく設定できるように、パスワードや接続方法をわかりやすく案内しておきましょう。

おもてなしの文化

日本特有の「おもてなし」の文化は、外国人から高く評価されています。

インバウンド対策としては「これがあの有名な日本のおもてなしだ」と思ってもらえるようなサービスに力を入れると良いでしょう。

言い換えれば、外国人観光客の中には「日本ではどこでも丁寧なおもてなしが受けられる」と考えている人もいます。

少しでも対応が不十分であったために悪い評価をされてしまうことがないように注意しましょう。

ホテルが抱えるインバウンド対策への懸念点

ホテルの中には、インバウンド対策にあまり前向きになれていないところもあるようです。

これには以下のような理由があります。

費用がかかる

新たなシステムの導入や外国人旅行者向けの対応に力を入れる以上、どうしても費用がかかります。

外国語に対応できるスタッフを新たに対応したり、トレーニングをしたりするのにも費用がかかるのは避けられません。

巨額の費用を投資しても収益化までに時間がかかることも考えられるので、実践するインバウンド対策に期待できる効果も含めて何を行うか考えていきましょう。

文化的な違いによるトラブルが発生するリスクがある

文化は各国によって異なります。

大声や騒音に関する考え方や、他の利用者との接し方が日本におけるマナーと異なり、トラブルにつながってしまうこともあるでしょう。

ホテルのスタッフだけではなく、他の宿泊客や近隣住民に迷惑をかける恐れもあります。

トラブルを避けるためにも、マナーに関するルールはホームページやチェックイン時の説明などでしっかり理解してもらいましょう。

ホテルでインバウンドへの対策を行うときのポイント

実際にホテルではどのような形でインバウンドへの対策を行っていけば良いのでしょうか。

ここでは、押さえておきたい8つのポイントを解説します。

ポイント①システムを導入する

業務効率化につながるようなシステムを導入していきましょう。

以下のようなものがあります。

【導入を検討したいシステムの一例】

  • 多言語対応の自動チェックイン機
  • キャッシュレス決済システム
  • 予約管理システム・PMS(ホテル管理システム)
  • 翻訳機器
  • スマートロック
  • 客室用タブレット

必須とも言えるのが、外国語に対応するためのシステムです。

英語だけではなく、中国語、韓国語にも対応しておきましょう。

ポイント②ホテルの魅力を伝える方法を考える

外国人観光客に伝わりやすい形でホテルの魅力を伝える方法を考えましょう。

たとえば、WebやSNSでの発信も検討してみてはいかがでしょうか。

他のホテルにはない魅力や特徴を中心にアピールすることが大切です。

テキストだけではなく、写真や動画も活用してみてください。

ポイント③地域ならではの資源を活用する

地域ならではの資源も積極的に活用していきましょう。

【地域資源の一例】

  • 地元で行われる祭りや有名な観光地
  • その地域ならではの食文化との連携
  • 地域の自然を活かした体験型アクティビティ
  • 地場産品を用いた料理やお土産、食べ歩き

地元の人からすると予想していなかったことが外国人観光客から評価されることもあります。

特に日本食に興味を持っている外国人観光客が多いので、日本食と関連するその地域ならではの資源を積極的に活用するのがおすすめです。

ポイント④正しい情報を発信する

発信する情報は常に正しいものにしましょう。

外国人は、外国から事前に得た情報をもとに旅行計画を立てて日本を訪れます。

そのため、提供している情報に誤りがあると大きな問題につながってしまうこともあるでしょう。

何か情報を発信する際は正確でわかりやすく、信頼できる情報であることが重要です。

ポイント⑤多言語に対応した印刷物を貼り出す

ホテル内に貼り出す印刷物は、多言語に対応したものにしましょう。

特に公共交通機関の利用に関することや観光情報が多言語に対応しておらず、困ってしまう外国人が多くいます。

ホテル内のマナーや食事の時間、施設に関する説明なども多言語対応が必要です。

ホテルまでのアクセスなどに関しても多言語で説明しておきましょう。

印刷物だけではなく、Webサイトに関しても同様です。

ポイント⑥インバウンド向けのプランを提供する

インバウンドで日本を訪れる外国人向けのプランを提供するのもおすすめです。

どこかへ旅行して宿泊したいと考えた際、宿泊施設の料理を重視する方も多いのではないでしょうか。

日本では食事付きのプランが多く見られますが、海外では「宿泊施設を予約する=部屋を借りる」と考えます。

食事はついていないケースが多いため、食事付きである場合はしっかりとアピールしていきましょう。

長期滞在で料金がお得になる特別パッケージなども人気です。

ポイント⑦予約サイトを見直す

予約サイトが外国人から見てわかりやすいものになっているか確認しておきましょう。

日本語にしか対応していなかったり、難しい表現を使っていたりする場合は見直しが求められます。

ホテルのイメージが沸きやすいように、写真や動画を使って紹介するのがおすすめです。

質問しやすいように問い合わせの窓口もわかりやすい場所に設置しておきましょう。

自社対応が難しいと感じる場合は外部業者に依頼するのがおすすめです。

ポイント⑧支払い方法を多様化する

国によって主流な支払い方法が異なるので、現金以外の支払いに対応しておくことが重要です。

キャッシュレス決済システムを導入しましょう。

日本でも現金派ではなくキャッシュレス派の人が増えてきているので、日本人観光客にも便利に感じてもらえるはずです。

ポイント⑨日本らしさが伝わるおもてなしを徹底する

日本らしさを感じられるような、おもてなしに力を入れましょう。

【外国人観光客が求めるおもてなし】

  • 一人ひとりに合わせた柔軟な対応
  • ホテル到着時のお出迎え
  • 温泉の入り方に関するレクチャー

他にも考えられるものはたくさんあります。

どういった取り組みができそうか従業員同士で話し合ってみるのも良いでしょう。

ポイント⑩日本文化を体験してもらう

外国人観光客に人気の日本文化を体験してもらえる機会を提供しましょう。

ホテルで実施しやすいものとしては、以下が挙げられます。

【ホテルで提供可能な日本文化の体験】

  • 抹茶や和菓子の提供
  • 茶道体験や書道体験
  • 浴衣の着付けサービス
  • 和風のインテリア

こちらも工夫次第でさまざまなことができそうです。

思わず写真を撮ってSNSにアップしたくなる体験を提供できれば、知名度の向上につながることも期待できます。

インバウンド対策にホテルが活用できる補助金

インバウンド対策の中には、コストがかかってしまうものもあります。

ですが、国では補助金を用意しているので、これらを活用してみてはいかがでしょうか。

以下のようなものがあります。

インバウンド対応力強化支援補助金

東京都及び(公財)東京観光財団による補助金です。

東京都内にある宿泊施設や飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設などを対象としています。

補助対象事業者 

都内で旅館業法の許可を受けて「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」を行う施設、ほか 

補助対象事業 

インバウンド対応強化のために行う多言語対応やインバウンド対応に関する人材の育成、公衆無線LANの設置、キャッシュレス機器の導入など 

補助額 

補助対象経費の2分の1以内(※多言語対応にかかる事業は3分の2以内) 
宿泊施設の場合は、1施設/店舗/営業所あたり上限300万円まで 
「防犯カメラ」の補助限度額は90万円(1施設当たり上限15箇所) 

交付決定後に開始される事業が対象となるので、注意しておきましょう。

受付は補助金申請額が予算額に達した時点で終了となります。

参考:TCVB 公益財団法人 東京観光財団:インバウンド対応力強化支援事業補助金

観光地・観光産業における人材不足対策事業

観光地や観光産業大手の人手不足対策のため、宿泊業の人手不足を解消するのに必要な設備投資等を支援するための補助金です。

補助対象事業者 

宿泊事業者 

補助対象事業 

自動チェックイン機・無人化のための機械や予約管理システム、清掃ロボット、献立管理システム、シフト管理システムの導入など 

補助額 

補助上限:最大500万円、補助率:2分の1 

日本は少子高齢化の影響を受けてなかなか働き手が見つかりません。

限られた人材を最大限に活用したうえで業務効率を高めるために役立つ補助金となっています。

参考:国土交通省 観光庁:観光地・観光産業における人材不足対策事業

ホテルでは早い段階でのインバウンド対策が求められる

ホテルで必要なインバウンド対策について紹介しました。

対策を実施していく際に注意したいポイントなどもご理解いただけたかと思います。

外国人観光客は非常に増えているため、インバウンド対策が不十分である場合は早めに取り組んでいきましょう。

具体的にどういった対応が必要かわからず困っているのであれば、旅館・ホテルのコンサルティング会社「宿夢」までご相談ください。

旅館やホテルの課題解決をトータルサポートする専門家として具体的な提案が可能です。

 

ホテル・旅館専門のコンサルティングなら株式会社宿夢

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コラム監修者

加藤大樹 kato daiki
取締役 副社長

<略歴>

  • 日本47都道府県制覇を5回達成した後、高級宿泊予約サイト「一休.com」に入社。
  • 旅館・リゾートホテルチームの営業と、バケーションレンタル事業の営業責任者を兼務し、ラグジュアリー領域を二刀流で経験
  • 2023年7月に株式会社宿夢の取締役副社長に就任。

弊社「宿夢」は、旅館・ホテル業界の課題解決に特化したコンサルティング会社として、業界の専門知識を活かし、宿泊施設の経営改善をサポートしています。
私たちの目指すのは、旅館・ホテル様それぞれが描く夢を実現すること。
そのために"宿のお困りごとは宿夢へ"をテーマに宿の総合商社を目指しております。

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