- コラム
2025.10.31
ホテルのレベニューマネジメントとは?収益向上につながる理由と手順
ホテルの利益が思うように伸びない、あるいは時期によって大きく変動する場合は、レベニューマネジメントの導入を検討してみましょう。
レベニューマネジメントは、ホテル業界における収益向上に効果的な手法です。
本記事では、需要予測や最適価格での販売を通じて収益を高める「レベニューマネジメント」について、その概要や実施方法、注意点を解説します。
実施する重要性やポイントを知りたい方もぜひ参考にしてください。
目次
Toggleレベニューマネジメントとは

レベニューマネジメントとは、収益最大化を目的とした客室販売の管理手法を指します。
データをもとに将来の需要を予測し、最適な販売価格を設定するのが基本的な手法です。
ホテルなどの宿泊施設では提供できる客室数が限られているため、空室をなくし満室を維持することが収益最大化につながります。
客室料金を下げることは、満室を目指すための有効な手段です。
しかし、値段を下げて満室にしてしまうと、本来得られるはずだった利益を失うことになります。
宿泊施設は、繁忙期と閑散期で需要が大きく変動します。
そのため、需要に応じた価格設定を行うことが重要です。
繁忙期は価格を上げ、閑散期は安く提供することで利益を確保します。
このように、需要に応じて最適なタイミングと価格を設定・販売することがレベニューマネジメントの基本です。
レベニューマネジメントの重要性

レベニューマネジメントは、ホテルにおいて利益を最大化するための取り組みであることから、重要性が高いことがわかります。
利益の最大化は、ホテル経営の安定化にも直結します。
たとえば、閑散期に周囲のホテルが料金を安くしているにもかかわらず、通常と同様の料金設定のままでいればお客様は競合に流れてしまうことでしょう。
近年はインターネット上で容易にホテル料金を比較できるため、他社より高い料金設定では選ばれにくくなっています。
反対に、繁忙期に周囲のホテルが料金を高く設定して収益を最大化している中、通常と同様料金で販売した場合、確かに高い需要にはつながります。
しかし、利益の最大化はできません。
このような状況が続けば、ホテルの経営は不安定なものになってしまいます。
レベニューマネジメントの特徴は、経営者やスタッフの勘に頼らず、データに基づいて料金を設定する点にあります。
レベニューマネジメントでは、データによる分析で適正価格を予測できるようになります。
「部屋は満室になったが料金を下げすぎて利益が出なかった」「料金を上げすぎて予約が入らなかった」といった事態を防ぐためにも、有効な手法といえます。
イールドマネジメントやダイナミックプライシングとの違い

ホテル経営における利益向上の手法としては、「イールドマネジメント」や「ダイナミックプライシング」も活用されています。
これらは概念としては共通点があるものの、異なる点も存在します。
イールドマネジメントは、主に航空業界で発達した手法です。
需要に合わせて座席の価格を変動させることにより、空席リスクを抑えたり、収益を最大化したりする方法のことをいいます。
レベニューマネジメントも、対象を座席から客室に置き換えた同様の考え方であるため、両者が同義で扱われることもあります。
ただ、イールドマネジメントの場合は価格調整のための手法であるのに対し、レベニューマネジメントはより広範な視点で収益を拡大させていくための手法ともいえます。
レベニューマネジメントは、価格設定だけでなく、販売チャネルの選定や在庫管理、顧客分析までを含む包括的な手法です。
一方、ダイナミックプライシングは、販売開始後の需要動向に応じて価格を変動させる手法を指します。
レベニューマネジメントやイールドマネジメントは、データをもとに事前に最適な価格設定を行うため、この点が大きな違いといえるでしょう。
ただし、どの方法も最終的な目的は最適な価格設定をすることにあります。
レベニューマネジメントのメリット
レベニューマネジメントを導入する最大のメリットは、収益の最大化を実現できる点にあります。
繁忙期に価格設定を高めるとしても、高く設定しすぎて売上の機会損失につながるような事態も防ぎやすくなります。
一方で、閑散期に料金を下げる場合も、妥当な価格を判断できるため、結果的に総売上の向上につながります。
過去データを活用して需要を把握しておけば、閑散期に食材を過剰に仕入れたり、従業員を過剰配置して人件費を増やしたりするミスも防ぎやすくなります。
レベニューマネジメントのデメリット
レベニューマネジメントを導入するデメリットについても確認しておきましょう。
主なデメリットとして、導入に時間や手間がかかること、また適切な価格設定に必要なデータ量を確保しなければならない点が挙げられます。
ホテルの収益を最適化するためには、さまざまな検証や情報収集を行わなければなりません。
これらの作業には時間や手間がかかります。
そのため、レベニューマネジメントを導入したくても、対応人員の不足により着手できないホテルも少なくありません。
しかし、後ほど詳しくご紹介しますが、レベニューマネジメントシステムを活用すればある程度時間や手間を抑えることが可能です。
それから、レベニューマネジメントでは、過去の利用状況など複数のデータをもとに分析を行い、将来的な需要を予測します。
十分なデータがなければ正確な予測は困難であり、データ収集自体にも時間と労力を要する点がデメリットです。
レベニューマネジメントを実施する際の手順
レベニューマネジメントを実施する場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。
成果を上げるには、正しい手順を踏むことが欠かせません。
以下の4つのステップで進めていくことになります。
①需要を予測する
はじめに行うのが、需要の予測です。
過去のデータを分析することで、勘に頼らない予測ができるようになります。
そのためには、過去のデータ情報をしっかり収集しましょう。
必要な情報の例は以下の通りです。
【需要の予測に必要なデータの一例】
- 宿泊者の年齢・性別・住所・宿泊目的など
- 曜日ごとの宿泊傾向
- 観光イベントなどホテル周辺の情報
- 競合ホテルの価格変動
- OTAの検索動向
- 過去の同時期の予約
需要を予測する際は「この程度の需要が見込めれば嬉しい」という数字ではなく、あくまで客観的な情報に基づいて分析し、数字を出すことが大切です。
②販売方法や価格を決める
次に、販売方法と価格を決定します。
データをもとにした予測からどの価格帯で販売するか決めましょう。
正しく需要が判断できれば、それに適した価格がいくらなのか見えてきます。
また、割引キャンペーンの実施タイミングも判断しやすくなります。
③効果検証を行う
レベニューマネジメントを行ったあとは、それで終わりとするのではなく、効果の検証を行いましょう。
効果検証を行わなければ、施策の成否を判断できません。
検証を行ってみると、予測していた需要と実際の需要とでは大きな差が見られることもあります。
稼働率や平均単価、収益などをもとに細かく数値を分析することが大切です。
④必要に応じて改善策を練る
効果検証の結果を受け、必要であれば改善策を練りましょう。
このとき重要なのは、結果の原因を明確にしたうえで改善策を検討することです。
原因を特定しないまま改善策を取っても、的外れな対策になってしまう恐れがあります。
改善策を講じたあとは再度レベニューマネジメントを繰り返しましょう。
継続的にPDCAを回すことで、予測と結果の差を縮小し、成果につなげられます。
レベニューマネジメントを実施する際のポイント
レベニューマネジメントを実施する際は、いくつかポイントがあります。
季節に合わせた価格設定、早期割引や最低宿泊日数の設定、競合動向の調査、システムの活用について検討してみましょう。
それぞれ解説します。
ポイント①季節ごとに適切な価格を設定する
ホテルの需要は季節によって変動するため、時期に応じた価格設定が求められます。
たとえば、夏休みや冬休み、ゴールデンウィークなどは長期休暇シーズンであり、ホテルにとって繁忙期にあたります。
特に夏は山や海への観光に強いホテルの需要が高まる時期です。
繁忙期にあたるタイミングは、料金を高めに設定してもお客様を獲得しやすいといえるでしょう。
花火大会や地元の有名なお祭りが行われるタイミングも、ホテルにとっての繁忙期になります。
一方、閑散期として挙げられるのが、冬です。
寒さで外出を控える人が増えることに加え、地域によっては積雪の影響でアクセスが困難になります。
1〜2月は年末年始の休暇が明け、仕事が忙しくなる時期のため、閑散期といえるでしょう。
需要から適した価格を設定することが大切です。
ポイント②早期割引や最低宿泊日数を設定する
早期割引によって早い段階で予約を確保できれば、稼働率の予測精度を高められます。
また、閑散期は空室リスクが高くなりやすく、後から「もっと早い段階で割引して販売しておけばよかった」と感じるケースも少なくありません。
割引率や実施期間を慎重に検討し、早期割引を活用して空室リスクを抑えましょう。
他に最低宿泊日数を設定するのも一つの選択肢です。
最低宿泊日数の設定は主に長期滞在向けホテルで採用されていますが、一般的な宿泊施設でも導入すれば利益率の向上が期待できます。
たとえば、2泊、3泊以上の限定プランを用意することで、売れ残りを防ぎやすくなります。
連泊による清掃コストの削減効果も期待できるでしょう。
特に周辺で大型イベントが開催される際などは、そのイベントのタイミングに合わせて最低宿泊日数を設定することで連泊予定のお客様を獲得しやすくなります。
ポイント③競合の動向を調査する
競合他社の価格動向や販売施策も継続的に確認しましょう。
たとえば、閑散期に競合が料金を安く設定しているのに自施設は高いままの料金設定でいると、なかなかお客様を獲得できません。
また、すぐ近くに競合のホテルがオープンし、オープンに合わせて安く宿泊できるプランを打ち出している場合、同じタイミングでお得なプランを用意するのも一つの方法です。
ポイント④レベニューマネジメントシステムを活用する
レベニューマネジメントはデータを活用した手法ということもあり、収集しなければならないデータが多く、手作業で行うと非常に時間と手間がかかります。
そこで、自動的に各データの分析ができるようになるレベニューマネジメントシステムの導入も検討してみるとよいでしょう。
システムを導入すれば、担当者の負担軽減に加え、人為的なミスの防止にもつながります。
また、システムを使うことで誰でも対応できる環境を整えておくことは、属人化問題の解消にも役立つのが特徴です。
中にはAIを搭載して適正価格を提案する機能を備えたものもあります。
レベニューマネジメントを実施する際の注意点
レベニューマネジメントは収益向上のためにぜひとも実践したい手法ですが、実施する際には注意点もあります。
ここでは、特に注意が必要な2つのポイントを解説します。
注意点①顧客に不公平感を与えてしまうおそれがある
レベニューマネジメントは、需要に合わせる形で料金を変動させる手法です。
ホテル側からすると収益を最大化できるメリットがありますが、宿泊するお客様からみれば料金の高い時期や安い時期があることで、不公平感を与えてしまう可能性があります。
「安い日に泊まる人よりも損をしている」という感覚が生まれてしまうこともあるはずです。
また、予約するタイミングによっても価格が変わるので、同じ部屋で1日しか違わないにもかかわらず、宿泊料金が数千円変わることもあります。
お客様の不満を抑えるためにも「現在繁忙期料金適用中」「早期予約でお得になります」など、お知らせを見やすい位置に提示しておきましょう。
注意点②オーバーブッキングに気をつける
オーバーブッキングとは、宿泊可能な数以上の予約を受けてしまうことをいいます。
特に複数の予約サイトを活用したり、電話予約を受け付けたりしている場合に発生しやすいトラブルではありますが、ホテル側の戦略が失敗してオーバーブッキングとなることも珍しくありません。
これは、いくつかキャンセルが出ることを想定し、あえて宿泊可能な数以上の予約を受け付けていた場合に起こるトラブルです。
オーバーブッキングが起こると宿泊を断らなければならないお客様が出ることになるので、顧客満足度を大きく損ねることは避けられません。
悪い口コミが寄せられ、ホテルの評判が落ちてしまうこともあります。
その結果、レベニューマネジメントによって得られた利益以上の損失が発生することもあるため、十分注意が必要です。
レベニューマネジメントで収益の最大化を目指そう
今回は、ホテルの収益を最大化するために実践したいレベニューマネジメントについて紹介しました。
成功すれば大幅に利益向上が期待できます。
一方で、正しいやり方を理解したうえで行わなければお客様に不公平感を与えたりオーバーブッキングになってしまったりする恐れがあるため、注意が必要です。
利益拡大のために取り組んでいきたいけれど自社でのレベニューマネジメント導入に不安がある場合は、旅館・ホテル専門のコンサルティング会社・宿夢へご相談ください。
各ホテルが抱える集客、戦略、人材の課題解決を総合的にサポートします。
コラム監修者
<略歴>
- 上智大学を卒業
- 大手企業向けERPシステムの開発・販売・サポートを行う企業に就職
- 経営資源に関するノウハウを培った後に、高級宿泊施設の予約サイトを運営する「株式会社一休」に転職。高級旅館・ホテルを累計300施設以上担当。
- 同時に、新サービス「一休.comふるさと納税」を2名で立ち上げ、初年度から事業の黒字化に成功。事業部長に就任し、事業をさらに急成長させた。
株式会社宿夢に参画してからは、1年で企業規模を倍にさせることに成功し、COOに就任。
<メディア掲載>
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